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セルビア、鉄道改修汚職で元大臣らを逮捕-ノヴィ・サド駅崩落事故受け

8月1日、セルビア検察庁組織犯罪対策特別部は、中国が主導する鉄道近代化事業を巡る汚職の容疑で、トミスラヴ・モミロヴィッチ(Tomislav Momirovic)元大臣を含む11人を逮捕したと発表した。この捜査は、2024年11月に北部ノヴィ・サド(Novi Sad)市の駅で屋根が崩落し16人が死亡した事故をきっかけに本格化していたもので、政権を揺るがす事態に発展している。

検察庁の発表によると、逮捕されたのは2020年から2022年まで建設・運輸・インフラ大臣を務め、その後通称大臣に転じたモミロヴィッチ氏のほか、元建設・運輸・インフラ省高官のアニタ・ディモスキ(Anita Dimoski)氏、セルビア鉄道インフラ公社(Infrastruktura Zeleznice Srbije)のネボイシャ・シュルラン(Nebojsa Surlan)元総裁代行らである。

また、モミロヴィッチ氏の後任として事故発生時に建設・運輸・インフラ大臣を務めていたゴラン・ヴェシッチ(Goran Vesic)氏も捜査対象となっている。同氏は事故後に辞任し、一時逮捕されたが、現在は入院中と伝えられている。

検察発表によれば、容疑者らは、ハンガリーとセルビアの首都を結ぶ鉄道の近代化プロジェクトの一部であるノヴィ・サド-スボティツァ(Subotica)区間の改修工事において、中国企業コンソーシアム(China Railway International Co. and China Communications Construction Company, CRIC-CCCC)との契約に不正な付属書を追加したとされている。これにより、同コンソーシアムは約12億1,400万ドルの工事費を請求し、さらに約6,426万ドルの追加工事を行うことが可能となった。検察は、この不正行為によって中国コンソーシアムが少なくとも約1,876万ドルの利益を得る一方、セルビアの国家予算に約1億1,560万ドルの損害を与えたと見ている。

この事件の発端となったノヴィ・サド駅の屋根崩落事故は、セルビア社会に大きな衝撃を与えた。事故後、汚職体質が背景にあるとして政府の責任を問う声が強まり、学生を中心とした反政府抗議活動が全国に拡大した。この運動は過去25年間で最大規模の民衆蜂起となっており、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領率いる政権の基盤を揺るがしている。デモ参加者の要求は、当初は工事に関する全文書の公開や関係者全員の訴追などに止まっていたが、現在は前倒し総選挙の実施要求が焦点となってきている。

この鉄道近代化プロジェクトを巡っては、セルビア国内の捜査に加え、2025年3月には欧州検察庁(European Public Prosecutor’s Office, EPPO)も欧州連合(EU)からの資金が不正に使用された可能性について独自の捜査を開始しており、事件は国際的な広がりを見せている。

事故を巡っては、今年7月、セルビア国内裁判所がセルビア政府と国営企業に対し、事故被害者遺族への賠償支払いを命じる判決を下している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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