
反政府抗議活動を主導する学生等が公共放送RTSを封鎖:現在も封鎖は継続中
4月15日、セルビアに対する抗議運動を主導する学生グループらは、公共放送RTSの本社と関連施設の出入り口を封鎖した。学生らは、メディア規制機関の新委員任命等の要求が満たされるまで封鎖を継続する方針を表明し、またこの封鎖に一人でも多くの市民が参加することを呼びかけている。
学生たちはソーシャルメディア上で、ベオグラード中心部のRTS建物前により多くの人々が緊急に必要だとして、すべての人に参加を呼びかけた。封鎖は15日の午後10時(中央ヨーロッパ時間)に始まり、学生たちは電波利用割り当てを含むメディア規制を管轄する独立機関である電子メディア規制機関(Regulatory Authority for Electric Media:REM)の新理事の任命、またはRTSの閉鎖を要求している。
REM理事会は議会によって任命された9名の委員によって構成されるが、現在の理事のうち5名が与党支持者であると見なされている。また、現在の理事は2024年11月に任期切れとなっているが、理事会は現理事会の任期を定めた法律の違憲性審査を憲法裁判所に申し立てられていることを理由に、議会は新たな理事の選任を行っていない。学生等は、本来は政府から独立した機関であるはずのREMが実質的に与党によって支配されており、そのためメディアの中立性を監視するというREMの本来の任務を果たせない状態にあると非難している。
EUのコス(Marta Kos)拡大・近隣政策担当欧州委員は、自身の公式Xアカウントへのポストを通じて、「セルビア社会における政治的な行き詰まりと分断を脱するため、セルビアは汚職との闘いと法の支配に関する改革を進める努力を強化すべきである。これはメディアの多元性強化と、すべてのステークホルダーを包含する透明性のある包括的なプロセスを通じたREM理事会メンバーの選出が含まれる。これらの改革はセルビアの欧州統合への過程においても重要である。EUはそのための支援を提供する用意があり、私自身も今月後半にセルビアを訪問してこの問題について協議する予定としている」との声明を発表した。
I am following closely the situation in Serbia and call upon everyone to refrain from further tensions. I am concerned that criminal charges are being sought against the Rector of Belgrade University.
— Marta Kos (@MartaKosEU) April 19, 2025
The EU is also following the blockade of the National Broadcaster RTS. Public…
2024年11月1日に、改修工事を終えたばかりのノヴィ・サド駅駅舎の屋根が崩落して16人が死亡して以来、セルビアの学生たちは国立大学のほとんどの学部を封鎖し、労働者、農民、教師らと共に全国で抗議活動を行い、汚職が原因だと非難するこの事故の責任追及を要求している。彼らは抗議デモに関するRTSの報道を繰り返し批判し、同放送局が政府の道具になっていると非難している。
RTSは、4月17日以降、ベオグラード中心部のタコフスカ通りにあるRTS本社及びコシュトニャク地区にあるRTS関連施設のすべての入口が封鎖され、従業員が建物に入れなくなっていると発表した。また、ノヴィ・サドの地域公共放送局RTVの建物の正面入口も封鎖されているが、RTVは放送には影響がないとしている。
内務省は、ベオグラード中心部で抗議者がRTS職員を地域から護送する警察車両の走行を妨害した後、封鎖に参加する人々に対し自制を呼びかけた。この事件で警察官1名が足首を負傷したと内務省は述べている。
学生等は3月にもRTSとRTVの建物の入口を22時間にわたって封鎖している。
この学生主導の封鎖は4月21日(現地時間)現在も継続している。
これまでのところ、警察の介入によりRTSスタッフは限られた形でのみ建物にアクセスできている状態となっている。4月16日の早朝には、警察が近くのケバブショップを通じてRTS従業員を建物に案内したことで、学生たちとの小競り合いが発生したと報じられている。
抗議活動参加者は、RTSとその姉妹放送局RTVによる報道内容が抗議の規模と重要性を反映していないと非難しており、公共放送に対する不満が高まっていた。
これに対し、政府寄りとみられるメディアは、学生たちがRTSスタッフへの食料配達を妨害していると非難する一方、「封鎖キッチン」イニシアチブに参加するボランティア立ちは、RTS本社の外でキャンプする抗議参加者のための食事を準備し始めている。
勢いを増す抗議活動の影響を受け、ヴチェヴィッチ(Miloš Vučević)前首相は1月に辞任を表明した。しかし、4月17日に成立したマツット新内閣は閣僚の半数以上がヴチェヴィッチ前政権からの留任となっており、批評家や野党からは、新内閣による現在の政治危機収束の見通しについて、懐疑的な声が挙がっている。
抗議活動を続ける学生とその支持者たちは、ノヴィ・サド駅崩落事故に関連する文書の公開を主な要求としており、それが完全に満たされるまで政府に圧力をかけ続ける方針を表明している。
(アイキャッチ画像は2025年3月のRTS封鎖時の様子、出典:Shutterstock)
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