コソヴォ政府が北部セルビア人自治体の土地収用を決定:欧米は非難の共同声明を発表
5月30日、コソヴォ政府は、セルビア人多数派地域であるコソヴォ北部のレポサビチ及びズビン・ポトクに所在する100カ所以上の土地区画を接収・国有化する決定を行った。
コソヴォ政府は、この土地国有化は公共の利益に資するインフラ事業のための措置だと説明しているが、北部に居住するセルビア人住民からの反発を招いており、セルビア人住民等が国有化措置の差し止めを求めてコソヴォ国内裁判所に訴訟を提起していた。コソヴォ政府側はは、これらの訴訟において裁判所が政府の国有化措置について法的問題が無いことを確認したと主張している。
このコソヴォ政府の決定に対し、欧米主要5カ国(米国、英国、仏、独、伊、通称「クイント」)とEU及び欧州安全保障協力機構(OSCE)は6月6日に次のとおり共同声明を発表し、懸念を表明した。
仏、独、伊、英国、米国の各大使館は、駐コソヴォEU事務所およびOSCEコソヴォミッションとともに、2023年5月30日にコソヴォ政府が下した決定を遺憾に思う。この決定は、コソヴォ北部のセルビア人多数派自治体における100以上の土地区画の収用を確定するものである。
出典:在コソヴォ米国大使館ウェブサイト
我々のうち数カ国は、以前にコソヴォ政府に対し、コソヴォEU法の支配ミッション(EULEX)を含む国際法の専門家による評価を共有していた。これらの評価は、政府が収用プロセスにおける手続き上および技術上の欠陥により、自国の法律および規制に違反したことを示している。我々は、コソヴォ司法制度が予備的収用決定に関して同様の法的懸念を指摘しており、政府がこれにまだ対処していないことに留意している。
一部の請求者の財産が最終的な収用決定から除外されたものの、コソヴォ政府がこの決定を下す前に、すべての未解決の裁判手続きが完全に裁定されるのを待たなかったことを遺憾に思う。
政府が収用活動を法律に準拠させ、適正手続きを踏み、関係所有者および利害関係者の財産権を十分に尊重するよう努力することが不可欠である。
これとは別に、我々はコソヴォ政府に対し、収用法案が(コソヴォ独立に関する)アハティサーリ案の下でコソヴォが行った約束に合致していないという我々の懸念を伝え、法案の可決前に適切に修正するよう促した。
我々は、コソヴォ政府に対し、活気ある民主社会の基盤である法の支配と良き統治を遵守するよう奨励する。さらに、政府に対し、非多数派コミュニティの権利の保護と促進を含むアハティサーリ原則への取り組みを再確認するよう呼びかける。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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