
ベオグラードで過去最大規模の反政府デモ:警察による音響兵器使用疑惑も浮上
3月15日、ベオグラードで、セルビア史上最大規模の反政府デモが行われ、10万人を超える市民が政府の汚職と権威主義的な統治に抗議の声を挙げた。
デモの規模と参加者
内務省発表では参加者数は10万7千人とされているが、抗議活動を監視する非政府組織「公共集会アーカイブ」は27万5千人から30万人が参加したと推計している。デモ参加者は全国各地から車や自転車、徒歩でベオグラードに集結し、国旗を掲げ、笛や空気ホーンを鳴らしながら、セルビア政府に対し説明責任を要求した。
この抗議活動は、2024年11月にノヴィ・サド駅で発生した屋根崩落事故が直接のきっかけとなっている。この事故では15人が死亡し、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)政権下での汚職と怠慢が原因だと多くのセルビア市民は考えている。
一部のデモ参加者と政権支持者グループの間で小規模な小競り合いが生じたものの、大きな衝突や暴力行為は発生せずにデモは終了したと報じられている。
EUのコス(Marta Kos)外交・安全保障政策上級代表は、「前例の無い規模のセルビア市民が平和裏にベオグラードでデモを行い、法の支配と強力で、説明責任を果たし、民主的な制度を求める声を挙げた。デモ参加者の安全を確保した全ての関係者に感謝する」とのメッセージを、自身のX公式アカウントを通じて述べた。
An unprecedented nr of Serbian🇷🇸 citizens peacefully demonstrated in Belgrade today, calling for the rule of law & strong, accountable democratic institutions. I thank all who ensured their safety.
— Marta Kos (@MartaKosEU) March 15, 2025
An agreement on reforms, which are necessary for Serbia’s EU path should follow.
学生主導の運動
現在のデモは学生が主導する形で3ヶ月以上にわたって継続している。これは2012年にセルビア進歩党が政権を握って以来、ヴチッチ政権にとって最大の挑戦となっている。
デモを主導する学生たちは4つの要求を掲げている:
- ノヴィ・サド駅改修工事に関する全ての関連文書の公開
- 学生や教授への攻撃に関与した者の起訴及び処分
- デモ実施中に逮捕された学生の起訴差し止め
- 高等教育予算の20%増額
政府の対応
ヴチッチ大統領はデモ後の記者会見で、22人が逮捕されたと発表した。ヴチッチ大統領は「政府は市民のメッセージを受け止めた」と述べたうえで、「これだけ多くの人々が集まれば、権力者は皆その声を理解しなければならない。我々は自らを変え、多くを学ぶ必要がある。セルビア国民の大多数が望んでいるのは『カラー革命』でも暴力でもなく、選挙による政権交代であることを、他の人々も理解したことを願う」と語った。ヴチッチ大統領はこれまで、一連の抗議活動は「セルビア国家を転覆しようとする外国政府に支援されたカラー革命の試み」であると批判してきた。
音響兵器使用疑惑
デモ終盤、駅舎崩落事故犠牲者に対する15分間の黙祷中に突如発生した騒動をめぐり、警察が音響兵器を使用したのではないかとの疑惑が浮上している。目撃者がメディアに語ったところによると、突然耳をつんざくような音が響き渡り、群衆がパニックに陥って逃げ出したとされている。
軍事専門家は、この音が長距離音響装置(LRAD)から発せられた可能性を指摘している。LRADは最大160デシベルの音量で標的に音の「ビーム」を発射する音響兵器で、被害者は鋭い耳の痛み、方向感覚の喪失、パニックを経験する可能性がある。
ヴチッチ大統領は音響兵器使用疑惑を「汚い嘘」だと述べ、そもそもそのような装置はセルビア国内には存在せず、警察はそのようなものは使用していないと主張している。一方、セルビア国内NGOであるベオグラード安全保障政策センターは、政府による音響兵器の使用を強く非難し、セルビア警察法違反の可能性を指摘している。
今後の見通し
デモは平和裏に進行したが、公式終了後に国民議会前で暴力的な小競り合いが発生。緊張した雰囲気の中、一人の男性が暴行を受ける事態となった。
この大規模デモは、ヴチッチ政権への不満が頂点に達していることを示している。抗議を主導する学生グループは「この抗議デモが終わるのは我々が終わりと言ったときだ。我々の要求は満たされていない」とSNSに投稿しており、抗議デモは今後も続く可能性が高く、収束の見通しは立っていない。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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