
西バルカン諸国の生活水準、EUレベルへの到達には数十年が必要か-欧州シンクタンクが共同で分析
ウィーン国際経済研究所(the Vienna Institute for International Economic Studies, WIIW)とスロヴェニアのシンクタンクであるシンク・ヨーロッパ(Think Europe)は、西バルカン諸国のシンクタンクとの共同研究イニシアティブである「converge2eu」による分析結果を発表し、西バルカン諸国が欧州連合(EU)の生活水準に達するには数十年を要するとの見通しを明らかにした。特に環境や教育の分野ではEUとの格差が拡大しており、長期的な課題が浮き彫りとなっている。
この分析は、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソヴォ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビアを対象に、経済、社会福祉、健康、教育、環境、ガバナンス、デジタル化、インフラの8つの主要分野におけるEU平均との収斂度を測定したものである。
分析結果によると、環境は最も深刻な課題であり、パフォーマンスがEU平均に対して遅れをとっているだけでなく、時間の経過とともにEU水準からの乖離が進行している。地域内ではアルバニアとコソヴォのみがEUの環境基準に近づいているものの、現在のペースではEU基準の達成までにそれぞれ100年以上かかると推定されている。同様に、教育分野の成果も地域全体で着実に低下しており、唯一格差を縮めているボスニア・ヘルツェゴヴィナでさえEU水準到達には18年を要し、他の国々はさらにEUとの差が広がっている状況である。
経済パフォーマンスの分野では、セルビアが最もEU平均に近く、現在の成長ペースを維持すれば35年後に追いつくと予測されている。これにアルバニアが53年、北マケドニアが59年、モンテネグロが75年で続く一方、ボスニア・ヘルツェゴヴィナとコソヴォは共に100年以上を要すると見られている。また、高速道路や鉄道、空港、電力設備容量などを含むインフラ分野では、EU基準との差が拡大しているコソヴォを除き、全ての国でEU水準に達するまでに100年以上かかるとの厳しい見通しが示された。
その一方で、より肯定的な傾向が見られる分野もある。社会福祉、健康、ガバナンスの3分野では、多くの国で進捗ペースに差はあるものの、EU基準への収斂が進んでいる。最も有望な分野はデジタル化であり、セルビアとアルバニアは現在のペースを維持すれば10年以内にEU水準に達すると期待されている。同分野でEUとの差が拡大しているのはボスニア・ヘルツェゴヴィナのみであった。
WIIWのプロジェクト担当者であるヨヴァノヴィッチ(Branimir Jovanovic)氏は、「converge2euは、この地域の人々が実際にどのように生活しているかに焦点を当てることで、EU水準への収斂という概念を再定義することを目指している」と述べ、分析結果を地域諸国政府とEUの双方の政策につなげ、西バルカンのEUレベルで繁栄とEUへの完全な統合という長期目標の達成を支援したいとの意向を示した。ヨヴァノヴィッチ氏によれば、このイニシアティブは、今後も西バルカン諸国の進捗を継続的に追跡していく予定だとされている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。