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EUのロシア産ガス輸入・通過禁止方針、セルビアに深刻な打撃-ヴチッチ大統領はオルバーン・ハンガリー首相と緊急会談

10月20日、欧州連合(EU)理事会(Council of the European Union)がロシア産天然ガスの輸入およびEU域内を経由した第三国への通過を禁止する案を承認したことを受け、セルビア政府高官からは、同国のエネルギー安全保障に対する深刻な懸念が相次いで表明された。この決定は、セルビアのガス供給の大部分を占めるルートを遮断する可能性があり、すでに米国の制裁下にあるセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)の問題と相まって、同国経済に甚大な影響を与えると見られている。

EU理事会プレスリリースによれば、EU理事会が承認した計画は、ロシア産のパイプラインガスおよび液化天然ガス(LNG)の輸入を2026年1月1日から禁止するものである。これには、EU域内を通過してセルビアのような第三国へ供給するルートも含まれる。既存の長期契約については2028年1月1日まで(短期契約は2026年6月17日まで)の経過措置が設けられるが、セルビアのエネルギー供給体制の根本的な見直しを迫る内容となっている。

セルビアは現在、消費する天然ガスの大部分を、ロシアから黒海、トルコ、ブルガリアを経由するパイプライン「バルカン・ストリーム(Balkan Stream、トルコ・ストリーム(Turk Stream)パイプラインの延長)」を通じて輸入している。今回のEUの決定により、EU加盟国であるブルガリアがガスの通過を認めなくなる可能性が極めて高くなった。

セルビア政府プレスリリースによれば、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー相は10月20日、この決定に対し「ブルガリアがバルカン・ストリーム経由のロシア産ガス通過を許可しなくなり、セルビアに損害を与えるだろう」と述べ、「NISの現状を考慮すると、状況はほぼ絶望的だ」と強い危機感を表明した。

マーリ(Siniša Mali)財務相も国営放送RTSに対し、この決定は「破滅的」であり、仮に代替ガスを確保できたとしても「現在の価格より少なくとも30~35%は高価になる」と指摘し、経済と家計への大打撃となると警告した。ブルナビッチ(Ana Brnabić)議会議長も「最近聞いた中で最も深刻で悪いニュースの一つだ。NISへの制裁と相まって、我々を殺すものだ」と述べた。

こうした事態を受け、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領はマーリ財務相と共に10月20日夜、ハンガリーの首都ブダペストを訪問し、オルバーン(Viktor Orbán)首相とエネルギー問題について緊急協議を行った。会談では、セルビアのエネルギー安全保障が最優先事項の一つであることが確認され、地域の課題への共同対応や長期的な安定確保について議論された。

ヴチッチ大統領は会談後、EUの決定は「良いニュースではない」と認めつつも、「解決策を探し、見つける。人々は心配すべきではない」と国民に呼びかけた。大統領は代替策として、北マケドニアとのガス・インターコネクターの完成や、ハンガリー経由でガスを受け入れるためのバルカン・ストリームの逆送能力の構築を挙げたが、同時に「それだけの量のガスをどこから調達するのか、そして30~40%高くなる価格をどう補償するのかという問題が生じる」と課題の大きさを認めた。

出典:RTS Sajt – Zvanični kanal

セルビアはEU加盟候補国でありながら、ロシアとの伝統的な友好関係を維持し、ウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁への参加を拒否してきた。しかし、ロシアのガスプロム(Gazprom)が間接的に支配する国内唯一の石油精製会社NISが10月9日に米国の制裁対象となるなど、ロシアへのエネルギー依存が同国の安全保障上の深刻な脆弱性となっている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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