
EBRDが西バルカン経済見通しを修正 ― セルビアは1.0ポイント下方修正、北マケドニアは上方修正
9月25日、欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development, EBRD)は最新の「地域経済見通し(Regional Economic Prospects)」を発表した。西バルカン地域全体の2025年の実質GDP成長率予測は、EU圏経済の景気減速と地域主要国であるセルビアへの投資低迷を背景に、5月時点の3.2%から2.7%へと下方修正された。
セルビア:大幅な下方修正、EXPO関連投資に期待
- 経済成長率予測: 2025年 2.5%(5月予測から1.0ポイント減)、2026年 3.3% 。
経済情勢 2024年に3.9%の力強い成長を遂げたセルビア経済は、2025年上半期には平均2.0%へと著しく減速した。この減速は、国内の社会不安が貿易やホスピタリティ産業に悪影響を与えたことに加え、建設部門がマイナス成長となったことが響いた。需要面では、家計消費と政府消費は拡大を続けたものの、投資が減少し、純輸出もマイナスに転じた 。結果として、経常収支赤字は上半期に倍増し、インフレ率も7月時点で4.9%と高止まりしている。
今後の見通しとリスク 短期的には、国内の政治的緊張や世界的な貿易摩擦がリスク要因として存在する。しかし、好材料として、自動車輸出の拡大やインフラ投資の加速が下半期の成長を牽引する可能性がある 。中長期的には、2027年に開催されるベオグラード国際認定博「EXPO 2027」に関連する大規模な投資が経済を押し上げ、2026年の成長率は3.3%に回復すると予測されている。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ:外需低迷と政治不安が重石
- 経済成長率予測: 2025年 2.2%(5月予測から0.3ポイント減)、2026年 2.7% 。
経済情勢 2025年第1四半期の経済成長率は1.7%に減速した 。賃金の上昇と海外からの送金が国内需要を下支えしたものの、主要な輸出先であるEU経済の低迷と、国内の根深い政治不安が経済活動全体の足かせとなっている。経常収支赤字は拡大傾向にあり、インフレ率も7月時点で4.8%に達している 。
今後の見通しとリスク 今後の経済は、鉱工業生産の縮小、貿易の不確実性の高まり、そして継続する政治的緊張といった重大な下方リスクに直面している。2026年には2.7%への成長回復が見込まれるが、構造的な課題の解決が不可欠である。
北マケドニア:公共投資が牽引し予測を上方修正
- 経済成長率予測: 2025年 3.0%(5月予測から0.4ポイント増)、2026年 3.0% 。
経済情勢 北マケドニア経済は回復基調を強めており、2025年の成長率は第1四半期に3.0%、第2四半期には3.4%へと加速した 。この好調は、建設、製造、貿易部門に支えられているほか、所得の増加とインフレの鈍化を背景とした堅調な個人消費が寄与している 。特に、汎欧州交通回廊VIII号線およびX号線沿いの高速道路建設といった大規模な公共投資が経済全体の牽引役となっている。
今後の見通しとリスク 堅調な内需と公共投資の継続的な実施により、2025年、2026年ともに3.0%の安定した成長が予測される 。ただし、リスク要因として、財政能力の制約や、欧州自動車産業の構造調整といった外的要因による影響が懸念される。
アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ:成長率見通し維持も個別の課題
EBRDは、これら3カ国の2025年成長率予測を5月時点から据え置いたが、それぞれ異なる成長要因とリスクを抱えている。
- アルバニア(2025年予測: 3.5%): 2025年第1四半期の成長率は3.4%で、サービス業と建設業が経済を牽引した。インフレは落ち着いており、経常収支赤字も大幅に縮小している 。リスクは、主要貿易相手であるユーロ圏の需要減退や、干ばつによる水力発電への影響である。
- コソヴォ(2025年予測: 3.9%): 2025年第1四半期の成長は3.6%に減速したが、これは純輸出の悪化が主因であり、一方で投資(13.6%増)と個人消費は力強い 。EUの成長計画による資金流入が期待される一方、国内の政治不安やユーロ圏経済の減速がリスクとなる。
- モンテネグロ(2025年予測: 2.6%): 2025年第1四半期の成長率は2.5%に減速した 。これは、プレヴリャ(Pljevlja)火力発電所の改修に伴う電力輸入の増加が貿易収支を悪化させたためである 。個人消費と投資は堅調だが、人件費の上昇が観光業の競争力に影響を与える可能性が懸念されている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。