
NISは米国に対し5度目の制裁実施延期を要請 ― セルビア政府は安定供給維持に苦心
7月18日、ロシア企業が過半数株式を保有するセルビアの石油大手NIS(Naftna Industrija Srbije)は、米国財務省に対し、同社に課されている制裁措置の適用について、5度目となる延期をするよう要請したと発表した。セルビア唯一の製油会社であるNISへの制裁は、国内の燃料供給と価格に深刻な影響を及ぼす可能性があり、セルビア政府は市場の安定を守るため、米国との間で困難な交渉を続けている。
米国財務省は今年1月、ロシアのエネルギーセクターを標的とする広範な制裁の一環として、ロシア国営のガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)およびガスプロム(Gazprom)が過半数株式を所有するNISを制裁対象に指定した。しかし、セルビア経済への甚大な影響を考慮し、制裁の完全な施行はこれまで4度にわたって延期されており、直近の猶予期限は7月29日に設定されている。
セルビアのドゥブラヴカ・ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Djedovic Handanovic)鉱業・エネルギー相は7月14日、公共放送RTSの番組内で「交渉は非常に厳しい。なぜなら我々はロシアとアメリカという二大国の間で、うらやむような状況にはないからだ」と述べ、交渉が難航していることを認めた。その上で、市場への安定供給と価格を維持するため、制裁が発動されないことがセルビアにとって極めて重要であるとの立場を強調した。
米国による制裁の発表当初、ガスプロム・ネフチはNIS株の50%、その親会社であるガスプロムは6.15%を保有していた。その後、ガスプロム・ネフチは制裁を回避する試みの一環として、保有株の一部(5.15%)を直接の制裁対象ではなかったガスプロムに譲渡し、自社の持ち株比率を50%未満に引き下げた。しかし、依然としてロシア企業2社で過半数を維持しており、制裁の根本的な原因は解消されていない。セルビア政府はNISの第2位の株主として29.87%の株式を保有している。
NISはセルビア国内の自動車燃料市場で約8割という圧倒的なシェアを占め、国内で300以上のガソリンスタンド網を運営している。同社の操業が停止すれば、市民生活や経済活動に計り知れない打撃を与えることは必至であり、セルビア政府は国家のエネルギー安全保障を賭けて、引き続き米国との対話を続ける方針を表明している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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