
EUとIFC、南東欧などで民間投資を促進する2億9100万ユーロの保証スキームを開始
4月28日、欧州連合(EU)と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は、EUグローバル・ゲートウェイ(Global Gateway)戦略の一環として、南東欧をはじめとする世界各地域での民間投資を促進するための保証スキーム創設を発表した。EUはIFCに対し最大2億9,100万ユーロ(約422億円)の金融保証を提供し、これにより10億ドル超の民間投資を呼び込むことを目指すとしている。
保証スキームの概要と目的
欧州委員会とIFCの共同発表によれば、この保証スキームは、EUが創設した「持続可能な開発基金プラス(EFSD+)」を財源とし、エネルギー、製造業、農業、中小企業、気候変動対応プロジェクトなど、成長と雇用創出に直結する分野への民間資金流入を後押しするものとされている。保証によって投資リスクを軽減し、リスクの高さから従来は投資が進まなかった新興・途上国地域への資金供給を促進する仕組みとなっている。
欧州委員会のコス(Marta Kos)拡大担当欧州委員は「今回の保証は、EU加盟候補国や東方近隣諸国のEU加盟プロセス支援に重点を置いている。エネルギー、製造、農業といった主要分野への大規模な民間投資を動員し、EUとの経済的収斂を加速させる」と強調している。
IFCのディオプ(Makhtar Diop)総裁は、「投資リスクを下げることで民間セクターの潜在力を解放し、雇用創出と経済成長の原動力となることができる。今回の連携で新たな市場機会が開かれ、持続可能な成長モデルの普及が期待できる」と述べている。
グローバル・ゲートウェイと西バルカンへの重点投資
グローバル・ゲートウェイは、2021年から2027年までにEUとEU加盟国、欧州開発金融機関が最大3,000億ユーロの官民投資を動員し、世界各地のインフラやデジタル、エネルギー、気候変動、教育・保健分野のギャップ解消を目指すEUの戦略である。西バルカン地域では、北マケドニアとブルガリアを結ぶ鉄道路線、アルバニアの浮体式太陽光発電所、セルビア・モンテネグロ・ボスニアを結ぶバルカン横断送電回廊、500自治体に無料Wi-Fiを提供するWiFi4WBなどが主な旗艦プロジェクトとして進行中である。
EFSD+保証の仕組みと期待効果
EFSD+はEUの投資枠組みの中核であり、2021~2027年に全世界で398億ユーロの保証枠を提供する。保証は法的拘束力を持ち、万一の損失時にはEUが支払い義務を負うため、民間金融機関や投資家にとって安心材料となる。こうしたブレンデッド・ファイナンス(公的資金と民間資金の組み合わせ)により、持続可能かつ包摂的な経済成長を後押しする狙いがある。
今回の保証スキームによる民間投資の呼び込みは、インフラや製造業、農業などの基幹産業の強化、雇用創出、グリーン移行の加速に直結する。また、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、モルドバ、ウクライナ向けには昨年9,000万ユーロの投資保証がすでに実施されている。
シケラ(Jozef Síkela)国際パートナーシップ担当欧州委員は「戦略分野への投資を通じて欧州企業にも新市場とビジネス機会が生まれ、相互繁栄と経済変革が進む」と述べている。
今回のEUとIFCの連携は、民間資本による新興国・途上国支援の新たなモデルとして、バルカン半島を含む広範な地域の経済成長と社会的包摂、グリーン・トランジションの実現に大きな弾みをつけることが期待されている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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