
欧州を襲う熱波により西バルカン各地で大規模火災が発生
7月初旬、欧州全域が記録的な熱波に襲われるなか、セルビア、北マケドニア、アルバニアなど西バルカン各国も熱波に見舞われ、乾燥した気候と強風を背景に大規模な山火事が相次いで発生した。各国政府は非常事態の宣言や国家資源を総動員するなど、深刻な事態への対応に追われている。
セルビア:熱波と数百件の火災、政府は復興資金を拠出
セルビアでは6月21日から続く熱波の中、特に7月7日には一日で数百件の火災が屋外で報告されるなど、事態が深刻化した。内務省は、火災発生の最も一般的な原因は人為的要因であるとして、国民に最大限の注意を呼びかけた。この火災により死者は報告されていないものの、消防士2名と市民4名が負傷した。
南部のクルシュムリヤ(Kuršumlija)、東部のボール(Bor)、中部のクラグイェヴァツ(Kragujevac)などの都市では、火災の延焼を受けて非常事態を宣言した。また、セルビア電力産業公社(EPS)が予防措置として一部の送電線を系統から切り離したため、セルビア西部やクラグイェヴァツ、南部の大都市ニシュ(Niš)の一部で停電が発生した。
猛威を振るった熱波は7月8日に終息し、セルビア北部では嵐と豪雨に見舞われたものの、気象当局は落雷による新たな火災やインフラへの影響について警告を続けた。一連の事態を受け、セルビア政府は7月9日、シニシャ・マーリ(Siniša Mali)財務大臣が、火災による被害への対応として、国家予算の予備費から300万ユーロを拠出することを決定したと発表した。政府は被害状況を把握し、支援と復興プログラムを調整するための委員会も設置している。
北マケドニア:全国的な危機管理事態を宣言
北マケドニア政府は7月8日、山火事の発生件数の増加を受け、30日間の危機管理事態を全国的に宣言することを決定した。この決定は、猛暑、強風、そして市民の安全や財産、環境への脅威が増大している状況を踏まえたものだとされている。
政府報道官によると、危機管理事態の宣言により、軍、警察、消防、その他の関連機関による調整された対応が可能となり、政府は人的・技術的資源を迅速に動員して事態の管理と国民の保護にあたる。7月9日の時点で、国内では7件の山火事が活動中であり、その多くは国土の中央部に集中しているが、首都スコピエ(Skopje)近郊でも2件確認されている。
アルバニア:廃棄物処分場の火災が鎮火
アルバニアでは、7月上旬に国内各地で火災が報告された。特に深刻だったのは、中部の都市エルバサン(Elbasan)にある大規模な廃棄物処分場で発生した火災である。蓄積された廃棄物に加え、高温と強風が消火活動を困難にし、火は数日間にわたって燃え続けた。
この火災による大気汚染への懸念から、市民が当局の対応の遅れに抗議するデモを行う事態にも発展した。消防隊、民間緊急部隊、警察、軍が動員された1週間にわたる消火活動の末、7月8日にピロ・ヴェング(Pirro Vengu)国防大臣が鎮火を発表した。当局は、今後はサーマルカメラを設置するなど、再発防止策を講じるとしている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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