
ボスニア裁判所がドディックRS大統領に対する有罪判決を言い渡す
2月26日、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ国家裁判所は、スルプスカ共和国(RS)のドディック(Milorad Dodik)大統領に対し、国際社会が任命した高等代表の決定を拒否したことにより、禁固一年の有罪判決を言い渡すと同時に、同氏を6年間に渡りRS大統領職から排除する決定を下した。
ドディックRS大統領への有罪判決
ドデイック氏は2023年7月1日から9日の期間において、シュミット(Christian Schmidt)高等代表が法的拘束力を持つ決定を下したにもかかわらず、それを無視し、シュミット高等代表によって発効を阻止された法律を公布する法令に署名した。このドディックRS大統領の決定に対し、ボスニア裁判所は有罪であると認めた。なお、この判決は第一審であり、ドディックRS大統領は控訴が可能である。
判決後、ドデイックRS大統領は自身のX公式アカウントを通じて「ボスニア・ヘルツェゴビナはサライェヴォと国際勢力の政治的要因による指導の下での失敗である。私は、ムスリム人とクロアチア人に対し合意を結び、ボスニアを利用しようとする外国人を拒絶するよう呼びかける。それがボスニアを守る唯一の方法だ」とコメントした。
Данас је важан дан за Српску, а рекао бих и за БиХ. Мислим да ће БиХ највише изгубити од овога судског процеса.
— Милорад Додик (@MiloradDodik) February 26, 2025
Важно је да Српска покаже да смо досљедни и достојанствени.
Једино што могу да се сјетим и што ми је тешко, jeсу наши људи који су морали да прођу кроз ову неправду… pic.twitter.com/myqnryy5V7
1990年代のボスニア紛争終結後に米国仲介で締結されたデイトン和平合意によれば、ボスニアはセルビア人主体のRSとボシュニャク人およびクロアチア人が多数派を占めるボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦という2つの構成体に分割され、それぞれ独自の政府と議会を持つ一方で、弱い中央政府によって結びつけられている。
ボスニアにおける高等代表の権限と役割
この事件の背景には、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける高等代表の特殊な立場がある。高等代表職は、1995年のデイトン和平合意に基づいて設置された。その主な役割は、デイトン和平合意の民生面の実施を監督し、ボスニアの平和と安定を維持することであるとされている。
高等代表には、1997年のボン会議で決定された「ボン・パワー」と呼ばれる広範な権限が付与されており、これには以下が含まれる:
- ボスニアの当事者が行動できない、もしくは行動する意思がない場合に法的拘束力のある決定を採択する権限
- 和平合意に違反する公職者を解任する権限
これらのボン・パワーに基づき、高等代表はこれまで法律の制定、司法改革の実施、憲法裁判所の決定の執行などをボスニア現地の政府や議会の同意無しに実施してきており、現在に至るまで、ボスニアにおける実質的な最高権力者に位置づけられている。
有罪判決がもたらす政治的緊張
ドディックRS大統領を巡る裁判はボスニア国内の政治的緊張を激化させている。RS政府は24日に緊急会議を開き、「ボスニア憲法の破棄に関する情報」について議論したうえで、これをRS議会に提出した。
また、ドデイックRS大統領は自身に対する有罪判決が出た場合、それを「無効」とし、RSがボスニアの国家レベルの機関から撤退する可能性を示唆するとともに、「外国勢力なしで全てを再交渉する」ことを求め、それが不可能ならばセルビアとRSによる連邦形成を提案すると述べていた。今回の判決後、隣国セルビアでは国家安全保障会議が召集されている。
ドデイックRS大統領は2010年から2018年までRS大統領、2018年から2022年までボスニア・ヘルツェゴビナ国家大統領府のセルビア人メンバーとして活動し、その後再びRS共和国大統領として第2期目を務めている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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