
セルビアが自国産兵器の国外輸出を一時停止:イスラエルやウクライナへの輸出が問題視される
6月23日、セルビア国防省は2025年6月23日、アレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領の命令に基づき、セルビアからの武器および軍事装備品の輸出を全面的に停止したと発表した。また、国内防衛産業で生産された製品の今後の輸出には、関係省庁の同意に加えて国家安全保障会議の承認が必須となることも発表された。
ヴチッチ大統領は同日、ベオグラードでの軍幹部との会合後に行われた記者会見において、全ての武器販売を停止し、現在は弾薬を自国軍に供給していると述べた。この発言は、イランとイスラエル間でのの緊張が高まる中で、セルビアからイスラエルへの武器売却に関する質問に答える中でなされたもので、大統領は「2023年10月7日以降に我々が(イスラエルに向けて)輸出していた当時と、今日の状況は別物だ。我々は今、全ての輸出を停止した」と語った。さらに、この輸出停止の決定は、セルビア製の武器がウクライナで発見されたとの指摘を受けた後になされたものであることも明かした。
この発表と同日、ロシア対外情報庁(SVR)は、セルビアが仲介業者を通じてウクライナに弾薬を供給しているとして、この1ヶ月で2度目となる非難を行った。SVRは、セルビアの国営武器製造企業クルシク(Krušik)社と民間防衛企業Eling社が、チェコ共和国お及びブルガリアの企業に多連装ロケットランチャー用のロケット組立キットを販売し、それが最終的にウクライナに渡ったと具体的に指摘した。SVRは今年5月にも、セルビアがウクライナでの紛争について中立を表明しているにもかかわらず、第三国経由でウクライナに弾薬を供給し「ロシアの背後を刺した」と非難していた。セルビアは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後もウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と緊密な関係を維持する一方、今月初旬にはヴチッチ大統領がウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領に対し人道支援や領土保全への支持を表明するなど、複雑な外交を展開している。
ウクライナへの武器供給疑惑に加え、セルビアはイスラエルへの武器輸出に関しても厳しい視線にさらされている。イスラエルのハアレツ(Haaretz)紙とバルカン調査報道ネットワーク(Balkan Investigative Reporting Network, BIRN)は今年、国営の武器輸出入仲介企業ユーゴインポート-SDPR(Yugoimport-SDPR)社を通じたセルビアのイスラエルへの武器輸出額が、2023年10月7日のハマス(Hamas)による攻撃を契機に、前年の140万ユーロから2024年には4,230万ユーロへと急増したと報じた。
国連のベン・サウル(Ben Saul)特別報告者(テロ対策における人権と基本的自由の促進・保護担当)は今月、イスラエルが国際人道法に違反して武器を使用する重大なリスクがある中で武器を輸出するセルビアの行為は国際法違反にあたり、許可を与えたセルビア政府関係者も戦争犯罪への加担で個人的な刑事責任を問われる可能性があると指摘していた。ヴチッチ大統領は記者会見で、6月13日のイスラエルによるイラン攻撃の後に状況は変化したと述べ、イスラエルとイランは共にセルビアの友好国であると強調した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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