
独レオニ、セルビアの工場閉鎖へ 1,900人の雇用に影響
7月4日、ドイツの大手自動車部品メーカー、レオニ(Leoni AG)は、セルビア事業部門であるレオニ・セルビア(Leoni Wiring Systems Southeast d.o.o.)が運営する4工場のうち、南東部ドリェヴァツ(Doljevac)市マロシシュテ(Malošište)の工場を2025年末までに閉鎖すると発表した。この決定により、約1,900人の従業員が職を失う見通しとなっている。
レオニ側の説明によると、今回の工場閉鎖の主な理由は、マロシシュテ工場が著しい赤字を計上しており、手作業が中心の生産体制では採算が合わなくなったためだとされている。加えて、同社は欧州自動車産業全体の不振がこの状況をさらに悪化させたと指摘している。同社は、セルビア国内の他の3拠点であるプロクプリェ(Prokuplje)、ニシュ(Niš)、クラリェヴォ(Kraljevo)の工場もコスト上昇に直面しているが、これらの工場では事業改善を目指し操業を継続する方針を示した。
中国のラックスシェア(Luxshare)傘下にあるレオニは、2009年にセルビアへ進出して以来、同国最大級の民間雇用主の一つとして地域経済に大きく貢献してきた。マロシシュテ工場は2014年に2,100万ユーロを投じて開設され、レオニ・セルビアは全生産量を国外に輸出し、2023年にはセルビアの輸出企業上位5社に入るなど、セルビアの主要輸出企業としての地位を確立していた。同社の2024年の売上高は449億ディナール、純利益は11億ディナールであった。
この発表に対し、セルビア国内では大きな波紋が広がっている。アドリアナ・メサロヴィッチ(Adrijana Mesarović)副首相兼経済相は、レオニ・セルビアの経営陣と会談し、政府として「一つ一つの雇用を守るために戦う」との声明を発表した。一方、セルビア国民議会議席を有する全国統一労働組合組織である「スロガ(Sloga)」は、会社側と従業員の処遇について協議を進めており、法定を上回る退職金の支払いを求めるとともに、解雇される従業員のための社会的プログラムの策定を要求している。
野党からは、政府の経済政策に対する批判の声が上がっている。特に、工場が立地するニシュ市周辺では、過去にも伊ベネトン(Benetton)や米ジョンソン・エレクトリック(Johnson Electric)などの外資系企業が相次いで事業を縮小し、大規模な失業問題が発生した経緯がある。今回のレオニの工場閉鎖は、それに続く打撃となり、地域経済の脆弱性を改めて浮き彫りにした。一部では、近年のセルビアにおける最低賃金の上昇が、労働集約型の同工場の国際競争力を削いだ一因であるとの指摘もなされている。
レオニは昨年、隣国ブルガリアの唯一の工場を閉鎖しており、今回のセルビアでの工場閉鎖は、欧州全体での事業再編の一環と見られている。
(アイキャッチ画像出典:LEONI Srbija)
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