セルビアとコソボがIDカードを用いた相互の越境に関して合意

8月27日、セルビアとコソボは、懸案事項となっていたセルビア・コソボ間越境時のIDカードの使用に関して合意した。交渉を仲介していたEUのボレル(Josep Borrell)外務・安全保障政策上級代表が自身の公式Twitterアカウントを通じて発表した。

ボレル上級代表によれば、セルビア側はこれまで認めた来なかったコソボ政府発行IDカードを用いたセルビア側への越境を認め、一方で、コソボ側はこれまで通りセルビア政府発行IDカードを用いたコソボ側への越境を認めることになる。

コソボの独立を認めないセルビアは、「コソボ共和国」の表記があるコソボ政府発行IDカードの有効性をこれまで認めておらず、コソボ政府発行IDカード保持者がセルビア側へ越境する場合は、セルビア政府が発行する90日間有効の文書をセルビア領内で携帯することが義務づけられていた。これに対し、コソボ政府は同様の措置をセルビア政府発行IDカード保持者に課すと宣言していた。

セルビア・コソボ間では、セルビア政府発行のIDカード及び車両ナンバープレートの使用を認めないとするコソボ側の措置を巡り7月末より緊張関係が高まっており、この問題を解決するため、EUの仲介によるセルビア・コソボ間の首脳会談が8月18日に開催されたが、合意には至っていなかった。

その後、EUのライチャーク(Miroslav Rajcak)ベオグラード・プリシュティナ間対話及び西バルカン担当特別代表と米国務省のエスコバル(Gabriel Escobar)欧州・ユーラシア担当次官補代理がともにベオグラードとプリシュティナを来訪し、セルビア・コソボ双方に対して交渉継続と妥協を働きかけていた。

今回の合意成立に関し、ボレル上級代表は「全ての住民の利益に資する欧州的な解決策が見出されたことを嬉しく思う。ブチッチ・セルビア大統領及びクルティ・コソボ首相に感謝するとともに、米国からの協力に感謝したい。」と述べた。一方で、もう一つの懸案事項であるナンバープレートを巡る問題についてはまだ合意が成立しておらず、ボレル上級代表は、「移動の自由を巡る問題はまだ完全には解決されておらず、ナンバープレートに関する合意に向けた建設的かつ現実的な努力を期待したい。」と述べている。

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