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セルビア、金融安定化へ向けて金の備蓄を加速 ― 国家戦略として国内生産分を優先確保

7月15日、セルビア中銀(National Bank of Serbiqa, NBS)のヨルゴヴァンカ・タバコヴィッチ (Jorgovanka Tabaković) 総裁は、将来の不確実性に対する予防措置として金の購入を強化しており、これにより7月15日時点でのセルビアの金準備高は50.5トンに達したと明らかにした。この動きは、地政学的リスクの高まりを背景に世界の中央銀行が外貨準備の多様化を進める大きな潮流と軌を一にするものといえる

タバコヴィッチ総裁は15日夜、公共放送RTSのインタビューに応じる中で、「備えある者が、安定を支える必要が生じる時のために購入するのだ」と述べ、金備蓄の戦略的重要性を強調した。タバコヴィッチ総裁は、ワールド・ゴールド・カウンシル (World Gold Council) が今月初めに発表した報告書において、セルビアは2025年の最初の5ヶ月間で1.7トンの金を購入し世界の上位10購入国の一つとなっていたことを指摘した。

セルビアの金準備高の価値は、総外貨準備高280億ユーロの16.6%に相当する。安全資産と見なされる金は、年初来で価格が約26%上昇しており、多くの資産クラスを上回るパフォーマンスを見せている。タバコヴィッチ総裁が2012年に就任して以来、NBSは合計36トンの金を購入。このうち海外から9億9300万ユーロで購入した17トンは、現在18億ユーロの価値に増大しているという。

セルビアの戦略で特に注目されるのは、国内の豊富な金資源を最大限に活用している点である。現在、NBSは国内での金の購入を、中国の紫金鉱業 (Zijin Mining) が所有するセルビア紫金銅鉱業 (Serbia Zijin Copper) からのみ行っている。タバコヴィッチ総裁は、「国内生産の金は(自国通貨の)ディナール建てで支払われる。それが最大の利点だ」と述べ、外貨を消費することなく準備資産を増強できるメリットを強調した。

紫金鉱業はセルビア東部で、旧国営企業のボール (Bor) 銅精錬施設と、チュカル・ペキ (Čukaru Peki) 銅・金鉱山を運営している。両鉱山を合わせた2024年の金生産量は約8トンに達し、2025年には7トンの生産が見込まれている。

また、今月9日には、紫金鉱業が出資する豪鉱山開発大手のストリックランド・メタルズStrickland Metals)社が、セルビア南部のロゴズナにおいて、高品位の金鉱脈を発見したと発表している。

参考記事

こうした金の国内調達を国家戦略として裏付けるため、セルビアは今年、中央銀行法を改正し、国内で産出される金やその他の貴金属についてNBSに「先買権(優先的な買取権)」を明示的に付与した。これは、国の金融安定性を外部環境の変動から守るため、自国の資源を直接的に活用するというセルビアの明確な意思表示だと言える。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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