モンテネグロ

モンテネグロ関連ニュース

モンテネグロ首相が訪日、万博の機会に「新たな友好」を宣言:経済協力の深化と東京への大使館開設を目指す

5月下旬、モンテネグロのミロイコ・スパイッチ(Milojko Spajić)首相が、大阪・関西万博への出席および経済協力の強化を目的として日本を公式訪問した。首相は滞在中、万博のナショナルデー式典で両国の「永続的で強力な友好関係の有望な始まり」を宣言したほか、ビジネスフォーラムでは流暢な日本語で投資を呼びかけた。さらに東京では日本政府や主要企業との会談を重ね、年末までの大使館開設を目指す意向を示すなど、両国関係を新たな段階へ引き上げるための具体的な道筋をつけた。

大阪での活動:万博を機に投資を呼びかけ

訪問の主要な目的の一つは、5月27日に開催された大阪・関西万博におけるモンテネグロのナショナルデー祝賀式典への出席であった。スパイッチ首相は式典でのスピーチで、1世紀半近くに及ぶ両国の外交史を新たなレベルへ引き上げる好機であると強調。「知識とイノベーションは社会進歩の基盤であり、日本の皆様はその最良の師である」と述べ、2028年までのEU加盟という国の目標達成に向け、日本との連携に強い期待を示した。

同日、ジェトロ(日本貿易振興機構)とモンテネグロ経済会議所は共同で「日・モンテネグロ・ビジネスフォーラム」を大阪市内で開催した。ジェトロの発表及びモンテネグロ政府プレスリリースによれば、当日は50社以上の日本企業が参加する中、過去に大阪大学や埼玉大学への留学経験を持つスパイッチ首相は流暢な日本語で登壇。「今がモンテネグロに投資する絶好の機会だ」と切り出し、低い税率(法人税9~15%)、安定したビジネス環境、そして事実上の国内通貨としてユーロを利用し単一ユーロ決済圏(SEPA)に加盟している点などの魅力をアピールした。特に、今後10年間で高速道路、鉄道、港湾といったインフラ整備に大規模な投資を行う計画を明らかにし、エネルギー、物流、観光、IT分野と共に日本企業の参画を強く呼びかけた。

東京での協議:大使館開設、専門家派遣で合意

大阪での日程を終えた首相一行は東京へ移動し、政府・企業関係者との協議に臨んだ。モンテネグロ政府プレスリリースによれば、城内実経済安全保障担当大臣との会談では、民主主義や法の支配といった価値観を共有する両国間の協力深化で一致。以下の具体的な取り組みを進めることで合意した。

  • 駐日モンテネグロ大使館の開設: スパイッチ首相は、両国関係の飛躍的強化のため、2025年末までに東京にモンテネグロ大使館を開設したいとの意欲を表明した。
  • ビジネスフォーラムの年内開催: 経済関係をさらに強化するため、年末までにロンドンまたはウィーンで、再度「日・モンテネグロ・ビジネスフォーラム」を開催する。
  • 専門家チームの派遣: JICA(国際協力機構)およびJETROの専門家チームをモンテネグロに派遣し、共同イニシアチブの準備を進める。
  • 友好議員連盟の設立: 両国の制度的な関係強化のため、「日・モンテネグロ友好議員連盟」の設立に向けて関心が示された。

日本企業・機関との連携強化

JICA本部では、田中明彦理事長と会談を行った。モンテネグロ政府プレスリリースによれば、田中理事長は、首相の訪問が日本で大きな話題となっていることを伝え、「貴首相はモンテネグロの最高のプロモーターだ」と称賛した。これに対し首相は、これまでの文化や防災分野での協力に謝意を示しつつ、今後はインフラ開発や投資誘致での協力拡大に期待を寄せた。

また、日本最大手エネルギー企業の一つであるJERAとの会談では、同社がモンテネグロのエネルギー分野への投資に強い関心を表明したとされている。モンテネグロ側発表によれば、JERAの可児行夫グローバルCEOからは共同作業部会の設置が提案されるなど、具体的な協力に向けた一歩を踏み出した。スパイッチ首相はJERAが運営する世界最大級の液化天然ガス(LNG)基地も視察し、今後の協力モデルについて技術的な協議を継続することで合意した。

今回のスパイッチ首相の訪日は、知日派リーダーの下でモンテネグロが日本との関係強化に本腰を入れていることを強く印象づけるものとなった。万博でのアピールに留まらず、政府・企業レベルでの具体的な協力案件を多数創出し、両国の経済関係が新たな段階に進むことが期待されている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA