
セルビアが単一ユーロ決済圏に正式加盟
5月22日、欧州決済評議会(European Payments Council, EPC)は、セルビアを単一ユーロ決済圏(Single Euro Payments Area, SEPA)の地理的範囲に含めることを承認したと発表した。これにより、セルビアはSEPAに加盟する41番目の国となる。
SEPAは、ユーロ圏を中心とする欧州の決済システム統合プロジェクトであり、現在、EU27カ国に加え、英国、ノルウェー、スイス、アイスランド等が加盟している。SEPAへの加盟により、参加国間でユーロ建ての決済を国内取引と同様に安全かつ効率的に行うことが可能となる。西バルカンでは、アルバニア、モンテネグロ、北マケドニアが既にSEPAに加盟しており、セルビアは西バルカンで4カ国目のSEPA加盟国となった。
EPCのプレスリリースによると、セルビアの銀行がSEPAの各決済スキームに参加し次第、既存の全EPC決済スキーム参加者は、セルビアの金融機関との間でSEPA送金・口座振り込み(SEPA Credit Transfer, SCT)、即時送金(SEPA Instant Credit Transfer, SCT Inst)、および自動引き落とし(SEPA Direct Debit, SDD)といったユーロ建て決裁スキームの利用が可能になる。セルビアの金融機関によるSEPA決済スキームへの参加は今年11月から可能となり、同国の決済サービス提供者(payment service providers, PSPs)が運用準備を完了する最も早い日付は2026年5月とされている。
この決定を受け、セルビア中銀(Narodna banka Srbije, NBS)は別途声明を発表し、自国の決済システムと規制を欧州連合(EU)の基準に整合させるための全ての措置を講じてきたと強調したうえで、「我々が長らく準備してきたSEPAへの加盟は、EU諸国との決済取引をより効率的にする機会を与えてくれるものであり、NBSはこのプロセスを引き続き実行していく」と述べた。
NBSは当初、今年3月に北マケドニアとモルドヴァが加盟を認められた際に、セルビアも同時に加盟することを期待していた。しかし当時、欧州委員会(European Commission)がセルビアのマネーロンダリング防止法およびテロ資金供与対策法の改善を要請したため、EPCはセルビアの申請を審査しなかった。NBSの当時の説明によれば、セルビアはその後法改正を進め、EPCの会合が開かれた3月6日に議会で改正案を採択したが、結果的にセルビアのSEPA加盟申請は議論の対象とならなかった。
SEPAへの加入は、地域内での越境決済に要する取引コストを軽減させるものと考えられており、EUは、西バルカン諸国のSEPA加入申請加入を積極的に支援している。西バルカン諸国は、地域内での取引コスト削減のため、各国内の関連規制を2024年内にSEPAに準拠した形へ改正することについて今年3月に合意している。
この取り組みは、欧州委員会が2023年11月に採択した西バルカン成長計画(Growth Plan for the Wetern Balkans)の一部でもある。同計画は、西バルカン諸国がEU加盟のメリットを前倒しで享受することを可能とし、西バルカンの経済成長を促進し、加盟プロセスを支援することを目的に総額60億ユーロの資金を投資するものであるが、実施の前提条件として、西バルカン地域内の問題を解決することが求められている。その問題の一つが地域内の取引コストの高さであり、現在、西バルカン諸国間の取引コストはEU諸国間の6倍に達しているとの試算が示されている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。