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ヴチッチ大統領がモスクワでの対独戦勝80周年記念式典に出席:プーチン大統領とガス供給契約について交渉、習近平国家主席とも会談

5月9日、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、モスクワで開催された対独戦勝80周年記念式典に出席するためにロシアを訪問した。この際、ヴチッチ大統領はモスクワにおいて、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領との会談後、同国の国営企業ガスプロム(Gazprom)と新たな長期天然ガス供給契約を有利な条件で確保することへの期待を表明した。

ヴチッチ大統領は、クレムリンでプーチン大統領と会談した後、セルビア国営放送(RTS)が報じた映像の中で、天然ガス供給を含む二国間協力のあらゆる分野について協議したと述べた。ヴチッチ大統領は、「本日、我々は交渉を開始した。我々の専門家が間もなく長期契約の策定に着手する。セルビアは今後、ロシア産ガスを有利な条件で得られると信じている」と語った。

セルビアとガスプロムとの現行のガス供給契約(年間最大22億立方メートル)は2025年5月31日に失効する。ヴチッチ大統領は、この日までに新たな契約が締結されなかった場合でも、新合意に至るまでは既存の条件でロシアからのガス供給が継続されるとの見方を示した。2025年のセルビアのガス消費量は約27億立方メートルに達すると予測されており、その90%以上を輸入に依存している。

会談の一部始終を公開したロシア大統領府の発表によると、プーチン大統領はヴチッチ大統領に対し、「ロシアはセルビアのエネルギー需要全体の約85%を賄い、エネルギー安全保障の保証人であり続ける」と述べた。さらに、「トルコストリーム(Turk Stream)パイプラインは、セルビアが契約した量の天然ガスを安定的に供給している。加えて、ガスプロムは信頼性の高い供給を行うだけでなく、セルビア側の要請に応じて契約義務を超える量の追加供給も行っている」と指摘した。

2012年から欧州連合(EU)の加盟候補国であるセルビアがロシアとの新たなガス契約締結を目指す動きは、EUがロシアからのエネルギー輸入を全面的に停止しようとする方針とは対照的となっている。欧州委員会は、2027年末までにロシア産ガスの輸入を完全に停止することを含む、ロシアのエネルギーへの依存から完全に脱却するためのロードマップを加盟国に対し提示している。

セルビアは、特に対露政策においてEUの外交政策と足並みを揃えていないとして欧米諸国から繰り返し批判を浴びてきた。欧州委員会によれば、セルビアは2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後にEUが科した対露制裁措置のいずれにも同調しておらず、ロシアとハイレベルな関係を維持している。

ヴチッチ大統領の今回の訪露は、EUからの不参加要請にもかかわらず、モスクワでの戦勝記念式典に出席した数少ない欧州の指導者の一人としての行動であり、その外交姿勢を象徴するものとなった。EUの外交安全保障政策上級代表(外相に相当)であるカヤ・カッラス(Kaja Kallas)氏は、ヴチッチ大統領の訪露決定がセルビアのEU加盟プロセスに与える影響について問われ、「EU加盟国はこれを軽視していない。次のステップを議論する際、加盟国は『誰があなたの友人で、あなたは本当は誰と取引しているのか』という多くの疑問を抱いている」と述べ、EU側の厳しい見方を示した。なお、EU加盟国の首脳としては唯一スロバキアのロベルト・フィツォ(Robert Fico)首相だけが同式典に出席した。

セルビア大統領府プレスリリースによれば、ヴチッチ大統領はモスクワにおいて、ロシア正教のキリル(Kirill)モスクワ総主教、カザフスタンのカシムジョマルト・トカイェフ(Kassym-Jomart Tokayev)大統領、そして中国の習近平国家主席と会談した。

このうち、周国家主席との会談においては、両国間の「鉄の友情」が改めて確認された。ヴチッチ大統領は、特に国際機関の場においてセルビアの領土保全と主権を一貫して支持する中国の姿勢に謝意を表明した。また経済協力の重要性も強調され、スメデレヴォ製鉄所(Železara Smederevo)に代表される中国からの投資や、ベオグラードで開催される「EXPO 2027」への中国の参加が議題に上った。さらに、インフラ分野での協力継続や、セルビア国内に鉄道車両工場を開設する可能性についても協議され、両国民の経済的な結びつきを一層強化することが確認された。

(アイキャッチ画像出典:セルビア大統領府)

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