
セルビア、大阪で投資カンファレンス開催し日本企業に投資を呼びかけ
6月23日、セルビアのシニシャ・マーリ第1副首相兼財務相 (Siniša Mali, First Deputy Prime Minister and Minister of Finance) は、大阪市内で開催された投資カンファレンスにおいて、日本の財界に対しセルビアの投資潜在能力と2027年にベオグラードで開催される万博(認定博)の計画を提示し、積極的な投資を呼びかけた。このカンファレンスは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を機に訪日したセルビア経済ミッションにあわせて、セルビア商工会議所 (Chamber of Commerce and Industry of Serbia) が大阪商工会議所、在セルビア日本商工会 (Japanese Business Alliance in Serbia, JBAS)、日本貿易振興機構 (Japan External Trade Organization, JETRO) と協力して開催したものである。
マーリ第1副首相兼財務相は基調講演で、セルビアが近年、世界的に魅力的な投資先としての地位を確立したと強調した。同国への外国直接投資は記録的な水準にあり、2024年には52億ユーロに達したと述べた。さらに、セルビアは発明家のニコラ・テスラやテニス選手のノヴァク・ジョコヴィッチ、サッカー選手のドラガン・ストイコヴィッチといった世界的な人材を輩出してきた国であると紹介し、経済面では、主要な地域との自由貿易協定(FTA)を通じて世界28億人の市場に特恵関税でアクセスできること、欧州でも上位の経済成長率、低い政府債務残高といった安定したマクロ経済環境を強みとして挙げた。また、2027年のベオグラード認定博(EXPO2027)開催に向けて今後3年間で323のプロジェクトに総額3兆円超を投資する計画が進行中であり、インフラ整備がさらに進展するとの見通しを示した。
日本側からもセルビアへの高い関心が示された。ジェトロの河田美緒理事は、「セルビアはジェトロが最も注目している国の一つ」であると述べ、2024年10月にジェトロが派遣したビジネスミッションに日本企業70社が参加した実績を紹介した。河田理事は、セルビアの魅力として自動車分野を始めとする幅広い産業基盤、活発なスタートアップエコシステム、周辺地域へのアクセスの良さ、法人設立手続きの迅速さなどを列挙した。さらに、昨今の不安定な世界情勢の中で欧州地域の戦略的重要性は日本にとって高まっており、企業の関心は西欧や中・東欧のみならず、西バルカン地域にも拡大していると分析した。
実際にセルビアへ進出している日本企業からも、投資環境に関する具体的な評価が示された。TOYO TIRESの宮守正美生産本部執行役員は、同社が世界に5つしかない工場の1つをセルビアに置いていることに言及し、企業向けの優遇措置、低いカントリーリスク、英語能力の高い優秀な人材の確保が容易である点、高速道路網へのアクセスの良さ、治安の良さ、コストの安さを高く評価した。一方で、改善を要する点として、関税政策の運用、従業員が容易に病気休暇を取得できる社会制度に起因する高い欠勤率、日本への送金手続きの煩雑さといった課題も指摘した。
カンファレンスでは、セルビア開発庁 (Development Agency of Serbia, RAS) のニコラ・ヤンコビッチ国際協力部長も登壇し、人件費、光熱費、オフィス賃料といった投資関連コストの安価さや、大学卒業生の33%を工学系が占める人材の豊富さ、法人税などの優遇税制をアピールした。
イベントの最後には、在セルビア日本商工会と日本にあるセルビア・日本ビジネスクラブとの間で協力に関する覚書(MOU)が締結され、両国間の経済関係を一層強化していくことが確認された。

マーリ第1副首相兼財務相は大阪滞在中、大阪・関西万博会場を視察し、日本や中国、フランス、アラブ首長国連邦など、ベオグラード認定博への参加を表明している国のパヴィリオンを訪れた。
(アイキャッチ画像出典:セルビア政府ウェブサイト)
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